【寄与分+不動産を獲得】価値のない不動産と多数の相続人がいる遺産分割を解決した事例
ご相談の概要
- ご相談者 :被相続人(亡くなった方)の甥
- 相手方 :他の相続人(計10名)
- 遺産の種類:不動産/預貯金
- 論点 :価値の低い不動産の評価、多数の相続人との協議、寄与分
ご相談の背景
お子様がいらっしゃらない叔母様が亡くなられ、ご依頼者様(甥)を含め、合計11名が相続人となりました。しかし、他の相続人は全員遠方に住んでおり、日頃のお付き合いも全くない状況でした。
遺産には叔母様のご自宅がありましたが、老朽化が進み、倒壊の危険もある状態でした。ご自宅の近くに住んでいたご依頼者様は、見かねて建物の管理を行い、固定資産税もご自身の資金から支払っておられました。
このままでは危険だと考え、建物を解体して土地を売却しようと他の相続人に手紙などで協力を呼びかけましたが、一部の相続人から理解が得られず、手続きが止まってしまっていました。
弁護士の対応
ご依頼者様のご希望は、このままご自身が不動産を相続し、責任をもって管理・処分することでした。しかし、そのためには他の相続人10名に対し、法定相続分に応じた代償金を支払う必要があります。不動産の固定資産評価額を基準に計算すると、亡くなった叔母様の預貯金だけでは到底支払えない、非常に高額な代償金が必要になる状況でした。
そこで、弁護士はまず、対象不動産の現地調査を徹底的に行いました。その結果、
- 土地が土砂災害警戒区域に指定されていること
- 土地に接する道が狭く、自動車の進入が不可能なこと
- 法的な規制により、建物の再建築が困難であること
などが判明し、「この不動産の市場価値はゼロ、もしくは解体費用を考えるとマイナスである」ということを客観的な事実として明らかにしました。
さらに、これまでご依頼者様が負担してきた固定資産税や管理の手間を「寄与分」として金銭的に評価し、これらの調査結果と合わせて、他の相続人一人ひとりへ丁寧に説明と交渉を行いました。
結果
弁護士による専門的な調査報告と交渉の結果、他の相続人全員から「そのような事情であれば」とご理解をいただくことができました。
最終的に、ご依頼者様が代償金を支払うことなく不動産を取得し、さらに、今後の管理・解体費用に充てるために預貯金も相続するという内容で、円満に遺産分割協議が成立しました。
弁護士からのワンポイントアドバイス
不動産の遺産分割では、固定資産評価額を基準に話が進められることが多くありますが、それが必ずしも実際の市場価値を反映しているとは限りません。特に、活用が難しい不動産の場合、弁護士が専門家として調査を行うことで、評価額が大きく変わる可能性があります。
また、被相続人の財産の維持管理に貢献してきた場合は、その働きを「寄与分」として法的に主張できることがあります。相続財産の評価額に納得がいかない、ご自身の貢献を認めてほしい、という場合は、諦める前に一度弁護士にご相談ください。
